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古今要覧
器財
権の形令に載する権の形、定かに伝へたるものなし、職人尽歌合にみえたるものは、全く今の秤とおなじ、守随彦太郎雲、慶長の比は、未極印(○○)お用ひず、そのヽち代々実名の極印お打たりしゆえに、先代の錘(○)おあらたむる時は、実名の一字、或は帰納の字お以て、小円印として、打添る事となりたり、四代目の彦太郎正得以来、実名の極印おあらたむることなし谷文朝家蔵、慶長九年の月日お記せし錘あり、二代目彦太郎の錘なるよしいへり、又秤に天下一と銘せし秤あり、その極印正得の字あり、是お守随に質すに、四代目彦太郎正得が時、元禄のはじめ、私に天下一の号は、けやけきことなりとて改めたりといへども、公より停められたるにはあらざれば、今もたま〳〵天下一の秤おもちきたる事あれども、直しつかはずといへり、