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神皇正統記
崇神
即位六年、己丑の年、〈神武元年辛酉より、此己丑までは、六百廿九年、〉神代の鏡造り石凝姥の神の初子おめして、鏡おうつし鋳せしめ、天目一箇の神の初子おして劔おつくらしむ、大和の宇陀の郡にして此両種おうつしあらためられき、護身の璽として同殿に安置す、神代よりの寳鏡、および霊劔おば皇女豊鍬入姫命につけて、大倭笠縫の邑といふところに神籬お建てあがめ奉らる、これより神宮皇居各別になれりき、
◯按ずるに、崇神天皇の朝、造りたまふ所の鏡剣は、歴世伝へたまへる神器なり、大倭の笠縫邑に遷し祭りたまひしは、伊勢神宮の御正体の御鏡と、熱田神宮の御正体の御剣となり