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古今著聞集
一神祇
天徳内裏焼亡に、神鏡みづからとびいで給ひて、南殿の桜の木にかヽらせ給ひたりけるお、小野宮殿ひざまづきて、御目おふさぎて、警蹕おたかくとなへて、御うへのきぬの袖おひろげて、うけまいらせられければ、すなはちとびかへりて、御袖にいらせ給たりと申つたへて侍り、されども此事おぼつかなし、其日の御記に雲、天徳四年九月廿四日、申の刻重光朝臣来申雲、火気頗消罷、至温明殿求之、瓦上に有鏡面、其径八寸、頭雖有一瑕、円規甚以分明、露出俯破瓦上、見之者無不驚感、御記かくのごとし、小野宮殿の事みえず、おぼつかなき事なり、