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古今著聞集
一神祇
内侍所(○○○)は、〈◯中略〉寛弘のぜうまうには、やけ給たりけれども、すこしもかけさせ給はざりけり、其時の公卿勅使行成卿なり、宸筆の宣命はこの御時はじまれり、長久焼亡にぞやけそんぜさせ給にける、それよりそのやけさせ給ひたる灰おとりて、からびつに入奉りて、いまおはします是也、世のくだりさま神鏡の御さまにてみえたり、神威いつとても、なじかはかはり給ふべきなれども、世のくだり行さまおしめし給ふゆえに、かくなりゆかせ給ふにこそ、今行末いかならん、かなしむべきこと也、
◯按ずるに、寛弘の焼亡に、少しも欠けずと雲ふは誤なり、前後に引ける、日本紀略等の諸書に就きて見るべし、