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増鏡
一おどろの下
御門はじまりてより八十二代にあたりて、後鳥羽院と申おはしき、〈◯中略〉寿永二年八月廿日、御とし四にてくらいにつかせたまひけり、内侍所神璽寳剣はじやういの時、かならずわたる事なれど、せんてい〈◯安徳〉つくしにいでおはしにければ、こたみはじめて三の神器なくて(○○○○○○○)、めづらしきためしになりぬべし、後にぞ内侍所しるしの御箱ばかり帰りのぼりにけれど、寳剣は、つひにせんていの海に入給ふ時、御身にそへてしづみけるこそいとくちおしけれ、