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伯耆巻
観応三年五月十一日、主上〈◯後村上〉八幡お御開ありて、芳野へ落させ給ひしとき、内侍所(○○○)の御櫃お持けるもの、敵に支られて捨行けるお、名和伯耆守長年が姪、大井太郎左衛門尉長重見つけ奉り、馬よりおり若党に持せ、防矢お射、矢種尽ぬれば、みづから戦ひ創お被りけり、御櫃にも矢十三まで中りけれども内には洞らず、恙なくして賀名生の御所にぞ着せ給ひける、