[p.0130][p.0131]
公事根源

内侍所御神楽〈◯十二月〉
主上行幸あり、先典侍掌侍まいる、すけはわらは二人に木丁おさヽす、内侍所に行幸なりぬれば、御拝、刀自祝詞など申、此間所作人、南殿の西のかたにて物の音あはす、内侍所のまへに主殿寮幔お引て、官人庭燎おたく、本末の座二行にまうけたり、近衛の召人うしろにあり、人長すえによこ座なり、次第に座につく、人長すヽみてひざつきなどしかせ、鳴高などいましめて次第にめす、笛篳篥本末の歌和琴、次第にひざつきにつきてつかうまつる、人長おほするにしたがひて、笛和琴拍子木にさぶらふ、末のひやうしひちりきは末につく、和琴は位によらず本の座の上に着す、鈴鹿お給ふ故とかや、よりあひ庭火もとすえはてヽ、人長かへり入、採物はてヽ韓神の拍子あげて後、人長たちてかなづる、其後勧盃あり、から神はてヽ、又すヽみて才のおのこめす、各座の末よりすヽみてひざまづきてかへりつヽ、薦まくらより千歳早歌などはてぬれば、星おほせらる、笛ひちりき音とりて星三首はてヽ、朝倉其駒おうたふ常のごとし、禄お給ふ、臨時の御神楽は秋の末に行るれば、名は臨時なれど、今はさだまれることに成たり、公卿の所作也、御所作などある時は、星おおほせらるヽ時御簾おうごかさる、御笛なればやがてねとりにて仰らるヽも便あり、臨時御神楽には禄なし、事はてぬれば本殿に還御なる、此御神楽は、一条院の御時よりはじまる、隔年に行はる、承保より行はる〈◯行はる恐衍文〉年々の事に成にけり、寿永の乱によて、内侍所西海に渡御なりて、三年おへて事故なく都へかへり参し時は、三箇夜の御神楽などありき、それは別して臨時に行はる、〈◯下略〉