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附大刀契
大刀契は二物の名なり、大刀は百済国より貢献せし所にして二口あり、一お三公闘戦剣と名づけ、又将軍剣とも、破敵剣とも雲ひ、一お日月護身剣と名づけ、日月七星青竜白虎等の象あり、又節刀数口あり、節刀とは、出征の時、大将に賜ひて、困外賞罰の権お付与するものなり、契は発兵符にして、魚形お成し、金銀塗銀の数種あり、蓋その物たる、一お割て二とし、其一お留め置き、其一お諸国に付し、相勘合して信憑とす、李唐の銅魚符の類なり、令の制にては、三関国には木契お賜ひ、其余の諸国には勅符お賜ふことなるに、金銅等お用いしお見れば、是は令以前の物なる可し、旧記或は大刀と節刀とお分書し、或は大刀契と雲ひて、大刀節刀お指すもあり、又大刀契お傅国璽と称するもあり、要するに大刀契は、践祚の時授受し給ひ行幸にも従ひ、神器に亜ぎて重寳なるものなり、