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愚管抄

平治元年、〈◯中略〉十二月廿五日乙亥、丑の時六波羅〈◯平清盛第〉へ行幸〈◯二条〉おなしてけり、〈◯中略〉内侍には伊予内侍、少輔内侍二人ぞこヽろえたりける、これ等まづしるしの御筥と寳劔おば御車に入てけり、〈◯中略〉尹明はしづかに長櫃お設て、玄象鈴鹿、御笛の箱、大刀契の唐櫃、昼の御座の御大刀、殿上の御倚子など沙汰し入れて、追ざまに六波羅へ参れりければ、武士ども押へて弓長刀さしちがへさしちがへして固めたるに、誰かまいらせ給ふぞと雲ければ、高く進士蔵人尹明が、御物もたせて参て候なりと申させ給へと申たりければ、やがて申てとく入れよとて参りにけり、