[p.0278][p.0279]
神皇正統記
後鳥羽
先帝〈◯安徳〉三種の神器おあひぐせさせ給ひしゆえに、践祚のはじめの違例に侍りしかども、法皇〈◯後白河〉国の本主にて正統の位お伝へまします、皇大神宮熱田の神あきらかに守らせ給ふことなれば、天位つヽがましまさず、平氏ほろびて後、内侍所神璽は帰りいらせ玉ふ、寳剣はつひに海に沈みてみえず、其ころほひは昼の御座の御剣お寳剣に擬せられたりしが、神宮の御告にて、神剣お奉らせ給ひしによりて、近頃までの御守りなりき、