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増鏡
十一今日の日蔭
正応も三年になりぬ、〈◯中略〉こぞの三月三日かとよ、つねうぢの宰相の女の御腹に、若宮いできさせ給へりしお、太子〈◯後伏見〉にたてまつらせたまふ、いとかしこき御すくせなり、〈◯中略〉おりいの御門〈◯後宇多〉も御子あまたおはしませば、坊になどおぼしけるお、ひきよぎぬるいとほいなし、〈◯中略〉永仁も六年になりぬ、七月廿二日、春宮〈◯後伏見〉に位ゆづりておりたまひぬ、〈◯伏見、中略、〉堀河の具守のおとヾの女の御はらに、さきの新院〈◯後宇多〉のわかみや〈◯後二条〉むまれ給へりし、六月廿七日御元服して、八月十日春宮にたちたまひぬ、御諱邦治と聞ゆ、