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増鏡
十二浦千鳥
徳治二年にもなりぬ、〈◯中略〉春宮〈◯花園〉は正親町殿へ行啓なりて剣璽わたさる、八月廿六日践祚なり、〈◯中略〉持明院殿〈◯伏見〉にはいつしかめでたき事どものみぞ聞ゆる、大覚寺殿〈◯後宇多〉には遊義門院の事にうちそへて御涙のひる世なくおぼさるべし、帥のみこ〈◯後醍醐〉の御事おあづまへのたまひ〈◯後宇多后姈子内親王〉つかはしたる、さういなしとて、九月十九日、立太子の節会ありて坊にい給ひぬ、いまほど世おとぢむる心ちしつる人々、すこしなぐさみぬべし、