[p.0306]
古事記伝
三十一
凡て上代のさまは、天皇崩坐ぬれば、即其太子の御代にて、太子又即天皇に坐り、されば仲哀天皇既に崩坐ては、品陀別命御腹内より、おのづから天皇に坐々て、其御代にぞありける、〈胎中天皇と申す御称のありしなども此故なり、〉然れども未生坐さず、御腹内に坐々しほどは、臣連八十伴緒こと〴〵に太后に仕奉り、生坐ても幼坐しヽほどはさらにも申さず、成長坐て後も太后の世に坐々ける限は、大御親に坐ませば、敬ひ仕奉り賜ひて、よろづ其御心に随賜ひつべければ、御子はおのづからなほ太子の如くに坐々て、太后ぞおのづから天皇の如くには坐々ける、然れども又実には本より此御子ぞ天皇に坐々て、太后の御世と申すには非るが故に、此記には其御世〈◯神功〉おば立ざるなり、