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令抄
公式
後宮職員令雲、蔵司尚蔵一人、掌神璽関契、問、神璽者此司所収歟、讃答、神璽関契、此司所収掌、
◯按ずるに、公式令の天子神璽とは何物お指すか明ならず、近藤芳樹の標註令義解、標註職原抄等には三種神器中の神璽の事とし、伊勢貞丈の神璽考、伴信友の神璽三弁、矢野玄道の神璽説等には、三種神器の外、別に神璽と称する御印ありと雲ひ、大日本史礼楽志の註にも、按神璽即寿璽、与践祚之日忌部所上神璽自別と雲へり、然れども三種神器の外に、践祚の日に奉る神璽ありしこと曾て所見なし、而して三種神器中の神璽とも見えず、蓋し令文は唐制に依りて記しヽものにて、其実、別に天子神璽と指すものありしにはあらざるべきか、因て附記して後考に備ふ、