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歴朝詔詞解

天智天皇のはじめよりの御しわざおつら〳〵考へ奉るに、〈◯中略〉此不改常典といふも、よろづの事改新おたけきことにする漢国ぶりの御しわざにして、神代より有来しさまおば停廃て、悉く漢国の制にならひて新に定め給へる也、〈◯中略〉さて此不改常典といふことおかく重く厳に詔たまふことは、はじめ此御制お立給へりし時よりの事にぞ有べき、さるは神代より有来し御制おいたく変改給ふ御しわざなれば、王臣百官人、天下の公民までもたやすく信服ざらむこと、又後に旧きに復すこともやと、よろづにあやぶみおぼしめせるからなるべし、かくて其例となりて次々の御世〳〵までも必かく詔給ふことヽはなれるなるべし、そも〳〵かく天地と共に長く遠くかはるまじくとは定め給へれども、わづかに五百年ばかりがほどにやう〳〵に頽れもてゆきて、保元平治元暦文治のほどより、天下諸国の有さまは又ふるきに立かへりて、此常典はたヾ名のみのこりて、おのづから又上代の形になりかへりにける皇神の御心お思ふべし、あなかしこ〳〵、