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嘉永元年御即位図
先南殿に高御座おまうけ、親王代、擬侍従、少納言、高御くらの左右に列座す、執柄の座には大宋の屏風おたつ、内弁は玉の冠おめし、休幕お出て幄に著しめ、儀式お執行ひ給ふ、外弁の公卿は承明門代より入て、異位重行に標につく、左右の大将代武礼冠に裲襠お著て東西の胡床につく、近衛の次将は束帯に桂甲お著て弓矢お帯し、南階の東西に陣し、庭上には日月象の幢いろ〳〵の鉾おたてならべ、天皇礼服お著御ありて、後房より出御なり、御座定りて執翳の女孺、翳おもつて竜顔おおほひ奉る、剣璽の内侍二人、褰帳の命婦二人前後に候す、兵庫寮鉦おうつの後、命婦すヽんで御帳おかヽぐ、女孺翳おふすれば宸儀はじめて見えさせたまふ、典儀かへり見て再拝お称す、賛者承り伝ふ、群臣再拝す、宣命使版に著て制旨おのぶれば、おの〳〵再拝舞踏す、武官の輩旗おふつて万歳お称ふ、主殿図書の両寮火炉のもとに行て、主殿生火し、図書香おたく、是位につかせ給ふ事お天につぐるよしなり、擬侍従すヽんで大礼ことおはりぬるよしお奏す、兵庫寮鉦おならす、女孺翳お捧ぐ、命婦すヽんで御帳おたる、天子入御まします、誠に厳なる御事どもにぞ、かしく、