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大猶院殿御実記

寛永七年九月十二日、京にて新帝〈◯明正〉御即位あり、皇女御位につかせ給ふ事、ならの京の後は、八百余の星霜おへて聞えざれば、外戚の威権によらせ給ふなど、天下後世の異論おおそれはヾからせ給ひ、先にも諫めさせ給へども、上皇〈◯後水尾〉御脱屣の思召立定まらせられ、にはかに英断ありし事ゆへ、こたびは関の東にも敢てのたまふ旨なく、酒井雅楽頭忠世、土井大炊頭利勝おのぼせられ、両使うち〳〵参内し、庭上にて大儀お拝覧せしめらる、