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永徳仮名次第
御譲位次第
当日刻限、大臣以下陣座に着す、職事、警固固関行べきよしこれお仰す、応徳三年の例によるべきよし同これお仰す、
次警固の事お行ふ、
 固関警固、前後不同なりといへども、今度寛元〈◯後嵯峨〉の例にまかせて、先警固お行なはるべし、
先官人おもて、外記おめして仰曰、内豎めせ、
内豎小庭に参す、大臣仰曰、諸衛めせ、諸衛将以下陣小庭に列立、府の次第によりて列立、大臣仰曰、かたくまほりたてまつれ、諸衛同音いせうして退、次上卿座お起て、宣仁門代おいでヽ纓おまき緌おかけて、平胡籙お帯して、陣の座にかへり着す、次固関の事お行なふ、大臣官人おもて、大内記おめす、内記参す、大臣仰曰、御譲位あるべし、固関勅符草おすべきよし仰す、次弁お召て、固関の官符おつくるべきよし仰す、次六位外記内舎人の着文お覧す、大臣見て返給ふ、奏聞せず、
次内記勅符の草お進ず、
上卿座ながら職事につけて奏聞、返給ふ、上卿内記おめして、清書すべきよし仰す、
次内記勅符清書お進ず、
上卿これお見て、座の前におく、
次木契并硯おたてまつるべきよしお内記に仰す、次内記木契硯お持参して、上卿のまへにおきて軾に候す、
勅符左方、木契中、硯右、
次上卿硯お引寄て墨おすり、筆おそめて、木契おとりて、木契のうへに銘おかく、
賜伊勢国 賜近江国 賜美濃国
事畢て筥に入て内記に給ふ、内記之お割く、
内記刀拳石おとりいだして、これおわりて、もとのごとくおし合て上卿に進す、
上卿勅符三通お、木契筥に加入て内記に給ふ、内記小庭にたつ、次外記官符お覧す、文杖なり、上卿これおみて小庭にたヽしむ、次上卿弓場に就て、職事二人〈式六位例あり、〉おもて、勅符木契官符等お奏す、
内記外記相従ふ、御覧畢て返給ふ、勅符御画あり、〈日おあそばすなり〉
次上卿陣の座に還着す、
内記外記、勅符官符おたてまつりて退下、次上卿、外記おめして座お敷べきよし仰す、
外記、掃部寮に仰て小庭に敷しむ、
次上卿官人おもて内豎おめす、
内豎小庭に候す、
上卿仰曰、少納言召せ、次少納言一人、中務輔一人、内記二人、〈一人持硯〉主鈴二人、印おもつて着座、
次上卿めして曰、近衛司、将監小庭に候す、
上卿仰曰、印、将監退く、
上卿、少納言おめして、仰いはく、印、次少納言主鈴印おいだす、次少納言案下につく、
主鈴印板お案の上におきて、将監の傍にたつ、
次上卿少納言召て、仰曰、時とへ、
少納言内豎に問て、時お申す、
次内記お召て、勅符お給て、仰曰、しるせ、
内記時おしるしてこれお返す、
次少納言おめして、勅符官符お給て請印せしむ、
次少納言官符お上卿に返たてまつる、上卿官符お少納言に返給ふ、
官符は覆奏せず
次職事おめして、勅符お奏す、
木契おば座にとヾめてこれお奏せず、職事返給ふ、
次少納言めして勅符お給ふ、次内記おめして木契右かた〴〵三枚お給ふ、内記一紙に裹て封じて上卿にたてまつる、上卿名の上字お書て、しばらく座の前におく、次内記めして、木契左方お三片お給ふ、内記つヽみわけて三とす、其中色々国の名おかく、此間少納言主鈴おして勅符お封ぜしむ、〈内記三につヽむ、木契入加べし、或革袋に入加雲々〉内記函上銘おかく、内記一人短冊お書て革袋につく、次少納言勅符木契なかにあり、
上卿にたてまつる、そのついでに上卿片名かきたる木契お少納言に給ふ、少納言退く、中務輔内記等退、
次内豎おめす、
内豎参す、仰曰、左右馬寮召せ、
次左右馬允各一人小庭に候す、上卿仰曰、固関使等に御馬給へ、馬允退く、次内豎めして仰曰、使に候はしむる大夫等召せ、次使五位三人小庭に列立、次上卿仰曰、参来、目なり、
第一者軾に参す、
上卿革袋一お給て仰いはく、伊勢国に罷りて鈴鹿の関かたくまほれ、次近江使おめして仰いはく、近江国に罷て逢阪の関かたくまほれ、次美濃使おめして仰いはく、美濃国に罷て不破の関かたくまほれ、使等退出、次官人以て内豎おめして仰いはく、左右馬の司、兵庫の司等召せ、
使三人小庭に列立
次仰いはく、左右の馬の寮、兵庫寮にまかりて固衛れ、使等退出、次内記おめして硯筥お返給ふ、以上警固固関儀かくのごとし、〈◯節略〉