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栄花物語
九石蔭
かくて御かど、〈◯一条〉いまはかくておりいなむとおぼすお、さるべきさまにおきて給へとおほせらるれば、殿〈◯藤原道長〉うけたまはらせ給て、春宮〈◯三条〉に御たいめこそは例の事なれとて、思しおきてさせ給程に、東宮行啓あり、みすごしに御たいめありて、あるべき事ども申させ給、位もゆづりきこえさせ侍りぬれば、東宮にはわか宮〈◯一条〉おなん物すべうはべる、だうりのまヽならば、そちのみや〈◯一条皇子敦康〉おこそはと思ひ侍れど、はか〴〵しきうしろみなどもはべらねばなむなど申させ給ふ、さてかへらせ給ぬ、御譲位六月〈◯寛弘八年〉十三日なり、〈◯節略〉
◯按ずるに、後一条天皇は、一条天皇の皇子にして、三条天皇と、一条天皇とは従兄弟なり、