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栄花物語
一月宴
御ものヽけ、いとおどろ〳〵しうおはしませば、さるべき殿上人とのばら、たゆまずよるひるさぶらひ給、いとけおそろしくおはしますに、けふおりさせ給ふ、あすおりさせ給ふとのみ、きヽにくヽ申思へるに、みかどヽいふものは一たびはのどかに、一たびはとくおりさせ給ふといふことも、必あるべきことに申思へるに、ことしは安和二年とぞいふめるに、位にて三とせにこそはならせ給ぬれば、いかなるべき御ありさまにかとのみ見えさせ給へり、〈◯中略〉はかなく月日もすぎて、ことかぎりあるにや、みかど〈◯冷泉〉おりさせ給とてのヽしる、安和二年八月十三日なり、みかどおりさせ給ぬれば東宮〈◯円融〉位につかせ給ぬ、