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増鏡
十一今日の日蔭
又の年〈◯正安三年〉のむ月の頃、内侍所の注連のおり給へるは、いかなるべき事にかなど思ひてさヾめく程こそあれ、東よりの御使のぼるとて、世の中騒ぎて、禅林寺殿〈◯亀山〉見奉り給ふ世にとや、正月廿一日、春宮〈◯後二条〉位につかせ給ひぬ、おりいの帝〈◯後伏見〉十四にて太上天皇の尊号あり、いときびはにいたはしき御事なるべし、わづかに三とせにておりさせ給へれば、何事のはえもなし、