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栄花物語
四十紫野
宮〈◯白河中宮賢子〉の御こヽちおもくおはしますとて、十七日〈◯応徳元年九月〉にいそぎかへらせ給ぬ、いとおもくおはしましけり、日おへておもくならせ給て、九月廿二日うせさせ給ぬ、あさましなども世のつねなり、〈◯中略〉内の御まへ〈◯白河〉には、ことわりとは申ながら、いふかたなくたぐひなく覚しめしいらせたまへり、〈◯中略〉内には月日のゆくもしらせたまはず、露の御ゆなどもめさずしづみいらせ給て、よるのおとヾのとにもいでさせたまはず、〈◯中略〉月日はかはれどたれも覚しなげくに、内はなほそのかみにかはらず、まつりごとなどにもいでさせ給ふこともなく、あはれに心ふかくおぼしいらせ給へり、いかに覚しめすにか、九条のあなたに鳥羽といふ所に、池山ひろうつくらせ給は、おりさせ給べき御心まうけにやなど申思へる程に、十一月廿六日〈◯応徳二年〉に二宮〈◯堀河〉に御位譲申させ給、ことしぞ八にならせ給、