見聞雑録

二十二

文久二年十二月廿一日夜、小十人格和学講談所附確次郎、加藤一周〈加藤氏之隠居に而、番町辺住宅之由、〉同道いたし、駿河台辺より〈一説に、駿河台中坊陽之助方より帰りと雲〉帰宅之途中、三番町堀田摂津守構へに於て、何者共不知四人程にて、右両人お及切害、其上日本橋御高札場、麹町三丁目横丁、湯島天神等〈江〉捨札お建候由、
逆賊安藤対馬守同腹いたし、前田健助一同、恐多くもいはれざる旧記お取調候段、不届至極に付、三番町に於て天誅お加へる者也、
前田健助は歌学に名高く、先年浪人に而、和歌之宗匠成しが、御目見被仰付、下谷長者町辺住宅にて、歌名夏蔭と雲、