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大鏡
八
六条式部卿の宮〈◯敦実〉と申しは、延喜帝〈◯醍醐〉一腹兄弟におはします、野の行幸せさせ給しに、この宮つかうまつらせ給べかりけれど、京のほど遅参せさせ給へりしかば、かつらの里にぞまいりあはせ給へりしかば、みこしとヾめてさきだてまつらせ給ひしに、なにがしといひしいぬかひの犬の、まへ足おふたつながらかたにひきこして、ふかき河の瀬わたりしこそ、行幸につかうまつり給へる人々さながらけうじ給はぬなく、御門もけうありげにおぼしめしたる御けしきにこそみえおはしましヽか、さて山ぐちいらせ給ひし程に、しらぜうといひし御たかの、とりおとりながら、御こしの鳳のうへにとびまいりいて候し、やう〳〵日は山のはに入かたに、ひかりのいみじうさして、山のもみぢにしきおはりたるやうなるに、たかのいろはいとしろくて、きじはこんじやうのやうにて、はねうちひろげていて候し程は、まことに雪すこし打ちりて、おりふしとりあつめてさる事やは候しとよ、