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源平盛衰記
三十二
平家著太宰府附北野天神飛梅事
八月十七日〈◯寿永二年〉に平家は筑前国御笠郡太宰府に著給へり、菊地次郎高直、宍戸諸卿種直、臼杵、戸槻、松浦党お始として、奉守護主上、如形被造皇居たり、彼大内は山中なりければ木〈の〉丸殿とも雲つべし、人々の家々は、野中田中なりければ、草深して露繁し、麻のさ衣うたね共、十市の里とも雲つべし、稲葉お渡る風の音、一人丸寝の床の上、片敷袖ぞしほれける、〈◯又見平家物語〉