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太平記
十七
自山門還幸事
将軍〈◯足利尊氏〉より、内々使者お主上へ進らせて申されけるは、〈◯中略〉若天鑒誠お照されば、臣が讒に堕し罪お哀み思召て、竜駕お九重の月に回され、鳳暦お万歳の春に復され候へ、〈◯中略〉且は条々御不審お散ぜん為に、一紙別に進覧候なりとて、大師勧請の起請文お副て、浄土寺の忠円僧正の方へぞ進らせられける、主上是お叡覧有て、告文お進らする上は、偽てはよも申さじと思召れければ、傍の元老智臣にも仰合られず、やがて還幸成べき由お仰出されけり、