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増鏡
五内野の雪
寳治も三年になりぬ、春たち帰るあしたの空の光は、思ひなしさへいみじきお、〈◯中略〉四日は、〈◯中略〉大宮院(○○○)〈◯後嵯峨后吉子〉内へ御幸はじめ(○○○○○○○)、これもかむたちめ、殿上人、有つるかぎり残なし、あじろびさしにたてまつる、皇后宮〈◯土御門皇女曦子〉の御かたのひがしむきへ御車よせて、みや御たいめむいとめでたし、うへ〈◯後深草〉はまだいといはけなき御ほどにて、かくいつくしき万乗のあるじにそなはり給へる御ありさまお、女院もいとやんごとなく、かたじけなしと見たてまつり給、