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栄花物語
四見はてぬ夢
花山院ひんがしのいんの九の御かた〈◯藤原伊尹女〉に、あからさまにおはしましけるほどに、やがていんの御めのとのむすめ中務といひて、あけくれ御らむぜしなかに、なにともおぼし御らんぜざりける、いかなる御さまにかありけん、これおめして御あしなどうたせさせ給けるほどに、むつまじうならせ給て覚し移りて、寺へもかへらせ給はで、つく〴〵と日ごろおすぐさせ給、〈◯中略〉かやうなる御有さま、おのづからかくれなければ、御封などもなくていかにいかにとて、きさいのみや〈◯円融后詮子〉摂政殿〈◯藤原兼家〉などきヽいとほしがりたてまつらせ給て、受領までこそえさせ給はざらめ、つかさかうふり、〈◯年官年爵〉御封などはあべきことなり、いとかたじけなきことなりとさだめさせ給て、さるべきつかさかうふり御封などたてまつらせ給へば、いとど御さとずみ心やすく、ひたぶるにおぼされて、ひんがしのいんの、きたなるところにおはしましどころつくらせ給、