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源平盛衰記
三十二
還俗人即位例事
同十八日、〈◯寿永二年八月〉左大臣経宗、堀河大納言忠親、民部卿成範、皇后宮権大夫実守、前源中納言雅頼、梅小路中納言長方、源宰相中将通親、右大弁親宗参入せられて、即位并剣鏡璽宣命尊号事等議定あり、〈◯中略〉旧主〈◯安徳〉尊号事、若無尊号者、天可似有二主、猶可有沙汰歟、宣命事任外記勘状、可被用嘉承例、〈◯堀河〉之由、一同に定申されけり、〈◯中略〉旧主已に尊号お奉られ、新帝〈◯後鳥羽〉践祚あれ共、西国には又三種神器お帯し奉られ、寳祚お受給て今に在位、国二主有に似たるか、叙位除目已下事、法皇(○○)〈◯後白河〉宣(○)にて被行之上者、強に急ぎ無践祚とも可有何苦、〈◯中略〉二人の帝の御坐事未聞、世の末なればや、京田舎二人の国王出来給へり、不思議也とぞ申ける、