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増鏡
二新島守
四にて位につき給て、〈◯後鳥羽〉十五年おはしましき、おり給て後も、土佐院〈◯土御門〉十二年、佐渡院〈◯順徳〉十一年、猶天の下にはおなじ事なりしかば、すべて三十八年がほど、この国のあるじとして、万機のまつり事お御心ひとつにおさめ、もヽのつかさおしたがへ給へりし、そのほどふく風の草木おなびかすよりもまされる御ありさまにて、遠きおあはれみ、近きおなで給ふ御めぐみ、雨のあしよりもしげヽれば、津の国のこやのひまなきまつりごとおきこしめすにも、難波のあしのみだれざらんことおおぼしき、藐姑射の山のみねの松もやう〳〵枝おつらねて、千世に八千代おかさね、霞のほらの御すまひ、いく春おへても、そらゆく月日のかぎりしらず、〈◯下略〉