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増鏡
十一今日の日蔭
おりいの御門〈◯後伏見〉十四にて、太上天皇の尊号あり、いときびはにいたはしき御事なるべし、才に三とせにておりいさせ給へれば、何事のはえもなし、〈◯中略〉さて此君お新院と申せば、父の院〈◯伏見〉おば中院ときこゆ、御門〈◯後二条〉の御父〈◯後宇多〉は一院と申、法皇〈◯後深草〉も此比一におはしますなめり、一院の政事きこしめせば、天下の人又おしかへし一かたになびきたる程も、さもめの前にうつろひかはる世の中かなとあぢきなし、