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長等の山風
附録
岡宮は、皇子のおはしましたりし宮号なり、そは大和高市郡飛鳥の地にて、舒明紀に、二年十月、遷都飛鳥岡傍、是謂岡本宮と見え、斉明紀に、二年、是歳於飛鳥岡本、更定宮地、号曰後飛鳥岡本宮とあるも同地にて、岡宮も同じ飛鳥岡傍に在しなるべし、竜蓋寺あざなお岡寺とよびて、今岡村といふ処にありとぞ、東大寺要録に、竜蓋寺記お引て、義淵僧正が、奇特ありて生れたる事おいひて、天智天皇聞食之、与日並知皇子、共令移岡宮、遂以宮賜僧正為寺、号竜蓋寺と見えたり、此岡宮おもて、尊号に係け奉られたるなり、〈此皇子の尊号お、神皇正統記、紹運録、帝王編年記等に、長岡天皇と記せり、岡お長岡とも雲へるによりて、然もまおしならひたるなるべし、〉