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大和物語

みかど〈◯宇多〉おりいたまひて、又の年の秋、御ぐしおろしたまひて、所々山ぶみしたまひて行ひ給けり、備前の椽にて橘の良利と雲ひける人、内におはしましける時、殿上にさぶらひて御ぐしおろし給ければ、やがて御ともにかしらおろしてけり、人にもしられ給はでありきたまひける御ともに、これなんおくれ奉らでさぶらひける、かヽる御ありきし給ふいとあしき事なりとて、内より少将中将これかれさぶらへとて奉らせ給けれど、たがひつヽありき給、