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後宮の出家は、聖武天皇の皇后藤原安宿媛に始まりて、其事蹟多端なれど、殊に例外なるものは、奉事せる天皇の在位中に出家すると、出家して後に再び入内するものとす、其出家の後に再び入内する事ありしは、婦人の出家は、多くは額髪お剃るに止まるに由れり、故に初に額髪お剃りて尼と為り、後に全剃して円顱と為るものあり、奉事せる上皇の出家の後に、倶に出家するものは其例少からず、