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神皇正統記
冷泉
この御門より天皇の号お申さず、また宇多よりのち諡おたてまつらず、遺詔ありて国忌山陵おおかれざることは、君父のかしこき道なれど、尊号おとヾめらるヽことは、臣子の義にあらず、神武以来の御号も、みな後代のさだめなり、持統元明よりこのかた、巽位あるひは出家の君も諡おたてまつる、天皇とのみこそ申すめれ、中古の先賢の義なれども、こヽろお得ぬ事に侍るなり、
◯按ずるに、諡お奉らざることは、宇多天皇に起るにあらず、聖武、孝謙、称徳等の御名も、諡にあらずして尊号なり、