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神皇正統記
斉明
斉明天皇は皇極の重祚なり、重祚といふ事は、本朝には是に始まれり、異朝には、〈◯中略〉唐の世となりて則天皇后世お乱られし時、我所生の子なりしかども、中宗おすてヽ盧陵王とす、同じ御子予王お立られしも、又すてヽ自ら位に即きたまふ、後に中宗位にかへりて唐の祚たえず、予王も又重祚あり、これお叡宗といふ、是ぞまさしき重祚なれども、二代にはたてず、中宗叡宗とぞつらねたる、我朝に皇極の重祚お斉明と号し、孝謙の重祚お称徳と号す、異朝にかはれり、是天つ日嗣お重くする故か、先賢の義定めて由あるにや、