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古事記伝
十八
すべて古の御代お、古は或は近江大津〈の〉宮〈に〉御宇(あめのしたしろしめしヽ)、天皇〈◯天智〉或は飛鳥〈の〉浄御原〈の〉朝〈◯天武〉などヽこそ申せるお、後世人はたヾ後の漢諡おのみ知て、返て本の真の御称おば更にしらず、古書に記せるお見ても、何れの御代の称とも、え弁へぬ人のみ多し、甚しき者は漢諡お当昔の真の御名と心得て、上代お疑ふ者もあるおや、古お尚む人はよく思ふべき事なりかし、