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蜻蛉日記

五月〈◯康保四年〉にもなりぬ、〈◯中略〉十よ日に、うち〈◯村上〉の御薬の事ありとのヽしるほどもなくて、廿よ日のほどにかくれさせ給ひぬ、〈◯中略〉みさヾきや何やときくにときめき給へる人々いかにと思ひやり聞ゆるあはれなり、やう〳〵日頃になりて、貞観殿御方〈◯尚侍藤原登子〉に、いかになど聞えけるついでに、
 世の中おはかなきものとみさヾき(○○○○)のうもるヽやま(○○)になげくらんやそ、御かへりごといとかなしげにて、
 おくれじとうきみさヾき(○○○○)に思ひいる心はしでのやま(○○)にやあるらん