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今昔物語
三十一
元明天皇陵点定恵和尚語第三十五
今昔、元明天皇の失給へりける時、陵取らむが為に、大織冠の御一男、定恵和尚と申ける人お差して、大和国へ遣しけり、然れば吉野郡蔵橋山の峯、多武峯の岸重れるが後に峯有り、前へに七の谷向て有り、定恵和尚此れお見給て、哀れ微妙かるべき止事無き地かな、但し天皇の御墓所にては左右は下れり、の人不有じ、前々も狭きに依て不取ざりける也けりとて不取なりぬ、然て其麓に戌亥の方広き所有り、其お取つ、軽寺の南也、此れ元明天皇の檜前の陵也、石の鬼形共お廻の池辺陵の其様に立て、微妙く造れる石など外には勝れたり、
今昔、元明天皇の失給へりける時、陵取らむが為に、大織冠の御一男、定恵和尚と申ける人お差して、大和国へ遣しけり、然れば吉野郡蔵橋山の峯、多武峯の岸重れるが後に峯有り、前へに七の谷向て有り、定恵和尚此れお見給て、哀れ微妙かるべき止事無き地かな、但し天皇の御墓所にては左右は下れり、の人不有じ、前々も狭きに依て不取ざりける也けりとて不取なりぬ、然て其麓に戌亥の方広き所有り、其お取つ、軽寺の南也、此れ元明天皇の檜前の陵也、石の鬼形共お廻の池辺陵の其様に立て、微妙く造れる石など外には勝れたり、