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増鏡
三藤衣
延応元年といふ二月廿二日、六そぢにてかくれさせ給ぬ、〈◯後鳥羽、中略、〉ちかき山にてれいのさほふになし奉るも、むげに人ずくなに心ぼそき御ありさまいとあはれになむ、御骨おば能茂といひし北面の、入道して御ともにさぶらひしぞ、くびにかけ奉りて宮こにのぼりける、さて大原の法華堂とて、いまもむかしの御荘の所々、三昧料によせられたるにてつとめたえず、