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増鏡
一おどろの下
いまの御門〈◯土御門〉の御いみなは為仁と申き、御はヽは能円ほういんといふ人のむすめ、さいしやうの君〈◯後鳥羽后在子〉とてつかうまつられけるほどに、この御門むまれさせ給ひて、のちには内大臣通親の御子になり給ひ、すえには承明門院と聞えき、このおとヾの北のかたのはらにておはしければ、もとよりのちのおやなるに、御さいはひさへひきいで給ひしかば、まことの御むすめにかはらず、この御門も、やがてかの殿にぞやしなひたてまつらせ給ひける、