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栄花物語
二花山
其冬〈◯天元元年〉関白〈◯藤原頼忠〉殿の姫君〈◯遵子〉うちに参らせ奉り給ふ、世の一の所におはしませば、いみじうめでたきうちに、殿の御ありさまなども奥深く心にくヽおはします、〈◯中略〉隻今の御有様に上〈◯円融〉もしたがはせ給へば、おろかならず思ひ聞えさせ給なるべし、〈◯中略〉かヽる程にことしは天元五年になりぬ、三月十一日中宮たち給はんとて、おほきおとヾ急ぎさわがせ給、これにつけても右のおとヾ、あさましうのみ万きこしめさるヽ程に、きさきたヽせ給ひぬ、いへばおろかにめでたし、大きおとヾのし給ふもことわりなり、帝の御心おきてお、世人も目もあやに浅ましき事に申思へり、一のみこおはする女御〈◯詮子〉おおきながら、かくみこもおはせぬ女御(○○○○○○○○○○○)〈◯遵子〉の后にい給ひぬるお安からぬ事に世人なやみ申て(○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○)、すばらの后とぞつけ奉りたりける(○○○○○○○○○○○○○○○)、