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栄花物語
六耀く藤壺
大殿〈◯藤原道長〉の姫君、〈◯彰子〉十二にならせ給へば、年の内に御裳著ありて、やがて内にと思しいそがせ給、よろづしつくさせ給へり、〈◯中略〉かくて参らせ給ふ事長保元年十一月一日の事なり、〈◯中略〉はかなく年もかへりぬれば、〈◯長保二年〉今年は后にたヽせ給べしといふ事世に申せば、此御前の御事なるべし、中宮〈◯藤原道隆女定子〉は宮々〈◯修子、敦康、〉の御事お思しあつかひなどして、参らせ給べき事唯今見えさせ給はず、〈◯中略〉斯くて三月に藤壺〈◯彰子〉后に立せ給べき宣旨下りぬ、中宮と聞えさす、此侍らはせ給〈◯定子〉おば皇后宮と聞えさす、