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十訓抄

皇嘉門院、始て院号かうふらせ給へりける比、侍従大納言成通卿参りて、左衛門佐と雲女房にあひて物語して、此宮の院号は何と申侍ぞと問ければ、皇嘉門院とさだかにいらへたりけり、次に兵衛と雲女房に此事お雲て問ければ、何とかやよづかぬやうなる御名にてとかといへりけるお、兵衛はゆうのもの也、左衛門佐がさりとてしらざらんやはと思て、いみじくいらへたりし、あやしう覚えしに、ゆうにこそおぼめきたりしかと感じ給けり、