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世継物語

今はむかし、小松の御門なん、おひ清和天皇の御時位につかせたまはで小松の宮とて、誠に久しく人まいるよもなくてすぎさせ給ふ、〈◯中略〉宇多の院位につかせ給ひて、けふまでその御たうにおはします、母上はきさきにならせ給ても、御丁のめぐりお日に一ど物かはんとみそかにいひて、めぐりありかせ給ひけると申伝たり、誠にやそれは小松宮より市に出て、物おうりかはせ給ひて、かくせねば心ちのむつかしきとて、しつれば心地のよくならせ給ひけると申伝へたり、
◯按ずるに、是れ即ち王女御班子の事お雲へるなり、