[p.1276]
続世継
四宇治の川瀬
白河院の御世に、きさき御息所などかくれさせ給ひて、さるかた〴〵もおはせざりしに、白河殿ときこえ給ふ人おはしましき、その人待賢門院おば、やしなひたてまつり給て、院も御むすめとてもてなしきこえさせ給ひしなり、その白河殿あさましき御すくせおはしける人なるべし、宣旨などはくだされざりけれども、世の人は祇園の女御とぞ申めりし、もとより彼院のうちのつぼねわたりにおはしけるお、はつかに御らんじつけさせ給て、三千の寵愛ひとりのみなりけり、たヾ人にはおはせざるべし、加茂の女御と世にはいひて、うれしきいはひとて、あねおとうとのちにつヾきてきこえしかば、それはかの社のつかさ重助がむすめどもにて、女房にまいりたりしかば御めちかヽりしお、これははつかに御らんじつけられて、それがやうにはなくて、これはことのほかにおもきさまに聞え給ひき、