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空穂物語
初秋
かくてすまひの節、明日になりて、内にいとかしこくまかなひにあたり給へる宮す所かういたちと、まうのぼり給ふべき事おおぼしつヽ、てつくしたる御けしやうおしおはします、そのすまひの日、仁寿殿にてなむきこしめしける、なえむ思ひたがへたるなるべし、その日あしたの御まかなひには仁寿殿の女御、ひるのまかなひには承香殿の女御、よさりの御まかなひには式部卿の女御、かうい十人、色ゆるされ給へるかぎり色おつくして奉れり、更衣たちみな日のよそひし、あめの下のめづらしきあやのもむおたてまつりつくし、宮す所たちまかなひつかうまつり給はぬは、うないにてなむさぶらひ給ひけり、