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源氏物語
一桐壺
いづれの御時にか、女御更衣あまたさぶらひ給ひけるなかに、いとやむごとなききはにはあらぬが、すぐれて時めき給ふありけり、はじめよりわれはと思ひあがり給へる御かた〴〵、めざましきものにおとしめそねみ給、おなじ程それより下らうの更衣たちは、ましてやすからず、朝夕のみやづかへにつけても人の心おうごかし、うらみおおふつもりにやありけむ、いとあつしくなりゆき、もの心ぼそげにさとがちなるお、いよ〳〵あはれなるものにおぼして、人のそしりおもえはヾからせたまはず、世のためしにもなりぬべき御もてなしなり、