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御息所とは、天皇の御寝に侍するものなり、其名もと天皇の休憩したまふ便殿より起れるお以て、更衣お指して言へるなり、然れども亦女御おも謂ひ、或は御寝に侍すれども、其職名なき者おも謂へり、之お要するに、一箇の私称にして、東大寺要録に引ける恵運の記に既に此名あるお視れば、清和天皇より前に起りしなり、鳥羽天皇以後には亦見えずして、専ら皇太子、親王の妃の称と為れり、皇太子の御息所は別に挙げたり、