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続世継
九あしたづ
むかし清和のみかどの御とき、かた〴〵おほくおはしけるなかに、ひとりのみやす所〈◯女御藤原多美子〉の、太上法皇〈◯清和〉かくれさせ給へりけるとき、御経供養してほとけのみちとぶらひたてまつられけるに、みのりかきたまへりけるしきしのいろの、ゆうべのそらのうす雲などのやうにすみぞめなりければ、人々あやしくおもひけるに、むかし給はりたまへりける御ふみどもおしきしにすきて、みのりのれうしになされたりけるなりけり、